Google スプレッドシートで Gemini を利用してみよう | GWS × Gemini(1)
2025.06.13
AI の進化スピードは目ざましく、今やビジネスにおいても欠くことのできないツールとなっています。Google が開発する AI である Gemini も例外ではなく、2025年6月5日には Gemini Pro 2.5 プレビューのアップグレード版が公開され、さらに強力な AI アシスタンスを利用できるようになりました。
当記事では、Google Workspace のアプリケーションの1つである Google スプレッドシート上で Gemini を利用する方法について、実際に利用してみた結果とあわせて説明します。
目次
Google Workspace における Gemini について
Google Workspace 上での Gemini の利用は、以前は有料オプションとして準備されていましたが、2025年3月の価格改定により、Google Workspace の Business 向けプランにおいて、スプレッドシートなどの Google Workspace アプリケーションで Gemini を利用することが可能となりました。
個人で利用する場合、Google Workspace アプリケーションでGemini を利用するには、個人向けのサービスである Google One の Google AI プラン(Pro / Ultra)の契約が必要ですが、大学生向けには最長15ヶ月無料で利用できる特典も準備されています。(2025年6月現在)
前提と注意事項
Google スプレッドシート上で利用できる Gemini のアシスタンスは、その基盤となるAIモデルの特定のバージョンに限定されるものではなく、スプレッドシートの操作を支援する機能群として提供されています。そのため、必ずしも最新バージョンの Gemini が利用されているとは限りません。
Google のサービスは日々その提供内容が更新されているため、機能が置き換えられたり、他の機能と統合される場合がありますのでご了承ください。
また、AI からの応答結果については、バージョンや利用履歴などの影響があるため、必ずしも同一の結果とはならないことにご注意ください。
Google スプレッドシート での Gemini の利用方法
Google スプレッドシートで Gemini を利用するには、主に以下の方法があります。いずれの場合も、生成された結果は Gemini のチャットスペースに出力されます。
1.チャットパネルで直接プロンプトを送信する
画面右上の Gemini のアイコンをクリックしてチャットスペースを開き、直接プロンプトを送信します。自由度の高い操作が可能ですが、対象セルやデータをプロンプト上で指定する必要があります。

2.セルから数式を生成する
セルの入力時に「=」に続けて「Ctrl + Alt + G」キーを押下して、生成したい数式の内容をチャットで送信します。生成結果の「挿入」をクリックすることで、対象のセルに数式を挿入できます。

3.データ範囲を指定してデータを分析する
対象のデータの範囲を指定して「このデータを分析」をクリック、または右クリック → 「Gemini で分析」を選択します。チャットスペースでさらに掘り下げることも可能です。

当記事で利用するテストデータ
当記事では、以下の内容のテストデータをもとに、Gemini を利用した操作を行います。データの内容は1クラスの3教科(国数英)の試験の点数と、各生徒の試験結果への感想です。(試験結果への感想を含め、このデータ自体も スプレッドシート上で Gemini を利用して生成しています)
No. | 国語 | 数学 | 英語 | 試験結果への感想 |
---|---|---|---|---|
1 | 84 | 53 | 73 | まずまずの手応え。次こそ全教科で高得点を狙いたい。 |
2 | 72 | 91 | 95 | 英語と数学は自信あり!もっと難しい問題に挑戦したい。 |
3 | 87 | 50 | 82 | 数学が苦手なので、もっと基礎からやり直したい。 |
4 | 100 | 79 | 62 | 国語は満点!この調子で他の教科も伸ばしていきたい。 |
5 | 70 | 35 | 82 | 平均点くらい。英語は良かったけど、数学はもっと頑張る。 |
6 | 70 | 48 | 100 | 英語は完璧だった!苦手な数学も次こそは。 |
7 | 100 | 78 | 74 | 全体的に良い感じ!応用問題も解けるようになりたい。 |
8 | 90 | 89 | 100 | 今回はかなり手応えがあった。次のテストも楽しみ! |
9 | 65 | 78 | 22 | 英語の点数が壊滅的だった。もっと単語を覚えないと。 |
10 | 85 | 72 | 91 | バランス良く点が取れた。苦手分野をなくしたい。 |
11 | 65 | 68 | 76 | 可もなく不可もなく。もっと効率の良い勉強法を探そう。 |
12 | 65 | 45 | 69 | 数学でつまずいた。計算ミスを減らす練習が必要だ。 |
13 | 79 | 60 | 76 | 国語は良かったけど、数学が伸び悩んだ。次こそは。 |
14 | 36 | 65 | 35 | 全体的に難しかった。もっと時間を使わないとダメだ。 |
15 | 40 | 96 | 70 | 数学はできたけど、国語が全く手が出なかった。 |
16 | 63 | 81 | 82 | 平均点を超えられた!この調子で次はもっと上を目指す。 |
17 | 54 | 39 | 100 | 英語は得意だけど、他の教科が足を引っ張っている。 |
18 | 81 | 81 | 64 | 全てにおいて、もう少し点が取れたはず。悔しい。 |
19 | 56 | 67 | 58 | 今回は思ったより点が伸びなかった。反省点を活かしたい。 |
20 | 46 | 61 | 64 | あと少しで平均点。基礎をしっかり固めていこう。 |
21 | 100 | 87 | 93 | 全教科で高得点!努力が報われて嬉しい。 |
22 | 70 | 95 | 81 | 数学はできた。英語はリスニングが課題かな。 |
23 | 76 | 93 | 64 | 思ったよりもできた!次も頑張りたい。 |
24 | 46 | 58 | 85 | 英語は得意だけど、国語と数学が足を引っ張った。 |
25 | 64 | 68 | 76 | 数学が一番難しかった。対策が不十分だった。 |
26 | 77 | 81 | 94 | 全体的に満足できる結果だった。次もこの調子で。 |
27 | 51 | 94 | 60 | 数学は良かった。国語が全くできなかった。 |
28 | 82 | 65 | 68 | 全体的にまずまず。苦手な分野を克服したい。 |
29 | 62 | 71 | 67 | 平均点くらい。もう少し点数を上げたい。 |
30 | 69 | 52 | 45 | 今回は全然ダメだった。もっと勉強に集中しないと。 |
31 | 62 | 51 | 80 | 英語はできたけど、他の教科はもっと頑張らないと。 |
32 | 100 | 91 | 80 | 英語は簡単だった!次も満点を目指す。 |
33 | 74 | 100 | 75 | 数学は得意だけど、時間が足りなかった。 |
スプレッドシートの概要
表がある場合、データのタイトル行や内容から、スプレッドシートの概要を判断することが可能です。
上記のデータをスプレッドシートに貼り付け、チャットエリアで「このシートの内容について、概要をまとめて」と依頼してみたところ、以下のように回答されました。
このスプレッドシートは、国語、数学、英語の試験結果と、それに対する感想を記録したものです。主な項目は以下の通りです。
- 試験科目ごとの点数(国語、数学、英語)
- 試験結果に対する受験者の感想
Gemini などのAIでは、直前の会話の流れや、現在アクティブなシートや選択範囲の内容を優先的に判断する傾向があるため、作業を行うシートやドキュメントの内容を把握させ、認識にずれがある場合は事前にアジャストしておくことで、以降の作業をスムーズに進めるためにも役立ちます。
数式や関数の提案/解析
数式・関数の提案
セル上で「=」を入力すると、利用する可能性が高そうな数式が Gemini により候補として表示されます。表示された関数を利用したい場合は、Tabキーを押下するか、提案された数式をクリックすることで、セルに数式が設定されます。

別の数式を設定したい場合は、「=」に続けて「Ctrl + Alt + G」キーを押下します。チャットスペースが開きますので、設定したい数式の内容をプロンプトで指定します。
この場合、プロンプトの入力欄には「する数式を作成してください」と入力されているので、前方に数式の内容を入力して送信します。(もしくは、直接チャットスペースで数式を作成するプロンプトを入力してもOKです)

数式は合計や平均点のような単純なものから、条件付きの計算や判定なども、日本語で指定することで生成することが可能です。
例1)合計点を取得
「当該行の学生の全教科の合計点を計算する数式を作成してください」
『=SUM(B2:D2)』の式が生成されました。式をセルに反映するには、式をコピーして対象のセルに貼り付けるか、「挿入」をクリックします。
下図のように「列の塗りつぶし」が作成されている場合は、「挿入」をクリックすると塗りつぶし範囲全てのセルに式が反映されます。

例2)平均点を取得
「当該列の教科の平均点を計算する数式を作成してください」
『=AVERAGE(B2:B34)』の式が生成されました。この場合は塗りつぶしが作成されていないため、「挿入」クリック時は単独のセルにのみ反映されます。他の教科にも適用したい場合は、式の反映後にコピー&ペーストや Ctrl + R キー押下、またはセルの範囲をドラッグして適用してください。

例3)条件付きの平均値を取得
「国語の点数が平均点以上の学生の、数学の点数の平均値を計算する数式を作成してください」
「国語の点数が平均点以上の学生の、英語の点数の平均値を計算する数式を作成してください」
それぞれ、条件付き平均を求める
『=AVERAGEIF(B2:B34, ">=70.939394", C2:C34)』
『=AVERAGEIF(B2:B34, ">=70.939394", D2:D34)』
の式が生成されました。このように、相対的に参照する範囲が異なるなど、数式をそのまま使いまわせない場合は、都度プロンプトで数式を作成する必要があります。
またこの場合「平均点以上」の判定には、直前に計算した各教科の平均点の値が利用されていることに注意が必要です。「平均点」をデータから毎回再計算させる場合は、プロンプトで指示を追加して再度数式を作成します。

例4)評定を決定
「合計点の上位30%の場合は"A"、下位30%の場合は"C"、間の40%は”B”とする数式を作成してください」
『=IF(F2>=PERCENTILE.EXC($F$2:$F$34,0.7),"A",IF(F2<=PERCENTILE.EXC($F$2:$F$34,0.3),"C","B"))』の式が生成されました。少し複雑な条件を指定した場合でも、適した関数を利用して数式を作成してくれます。また、今回は列の塗りつぶしが作成されているので、「挿入」をクリックして範囲全体に適用できます。

数式の解析
以前の担当者がスプレッドシート上に設定していた式が複雑だった場合など、セルに設定されている数式を解析し、説明してもらうことも可能です。
例えば、先ほどの例で挙げた「評定」を決定する式をG列の各行に設定しておきます。
(G2:G34に設定されている数式)
=IF(F2>=PERCENTILE.EXC($F$2:$F$34,0.7),"A",IF(F2<=PERCENTILE.EXC($F$2:$F$34,0.3),"C","B"))
...(中略)...
=IF(F34>=PERCENTILE.EXC($F$2:$F$34,0.7),"A",IF(F34<=PERCENTILE.EXC($F$2:$F$34,0.3),"C","B"))
前述のとおり、「直前の会話の流れや、現在アクティブなシートや選択範囲の内容を優先的に判断する傾向がある」ため、事前にGemini のオプションから履歴を削除(リセット)しました。

リセットされた状態で、改めてセルを指定し、数式の説明を依頼してみます。
G2セルに設定されている数式「=IF(F2>=PERCENTILE.INC(F$2:F$34,0.7),"A",IF(F2<=PERCENTILE.INC(F$2:F$34,0.3),"C","B"))」で処理される内容を説明してください。
Gemini からは、以下の通り応答が返ってきました。
G2セルに入力されている数式は、合計点(F列)のデータに基づいて、各生徒の評定を「A」、「B」、「C」の3段階で自動的に割り振るものです。具体的には以下の処理が行われます。
- "A"の評価基準: 合計点が全体の合計点の上位30%以内に入る場合、評定は「A」になります。
- "C"の評価基準: 合計点が全体の合計点の下位30%以内に入る場合、評定は「C」になります。
- "B"の評価基準: 上記のどちらにも当てはまらない(つまり、合計点が全体の合計点の上位70%から下位30%の間にある)場合、評定は「B」になります。
この数式は、合計点の分布に基づいて相対的に評定を決定するため、点数の絶対的な基準ではなく、クラス全体の中での位置づけを反映した評価となります。

このように、既に設定されている数式を自然な文章で具体的に説明してくれるため、数式を理解したり、修正する必要がある場合にとても役立ちます。
データの整理や分析
グラフやピボットテーブルの生成
グラフやピボットテーブルなど、データの集計結果の出力も、Gemini を利用して簡単に作成することが可能です。
グラフの作成
グラフの作成時はセルの範囲などを細かく指定しなくても、日本語でデータの内容とグラフの種類を指定するだけで作成することも可能ですが、データの範囲と軸の内容、単位を示すことで、ほぼ正確なグラフが作成できます。
今回は以下の内容で棒グラフの作成を依頼しました。
B2:D34の範囲のデータをもとに、各教科ごとに点数の分布を表す棒グラフを作成してください。
横軸は50点未満、50点以上60点未満、60点以上70点未満、・・・、90点以上、縦軸は人数としてください。
以下のようにグラフが生成されました。「挿入」をクリックすると、グラフ用のデータ(表)とグラフの図が、新しいシートに生成されます。図だけが必要な場合は、生成されたグラフの図のメニュー(「プレビュー」の横)から「グラフをコピー」を選択することで、静的なグラフとして貼り付けることも可能です。

もちろん円グラフをはじめ、折れ線グラフや分布図やなど、その他のグラフも簡単に作成することができます。ここでは、試しに合計点の分布を示す円グラフをの作成を依頼してみます。
合計点の分布を示す円グラフを「180点未満」と、180点以上を30点刻みで作成してください。
生成されたグラフは、棒グラフ同様に「挿入」または「グラフをコピー」して、シート上で利用することが可能です。

ピボットテーブルの作成
データの集計を行いたい場合、Gemini でピボットテーブルを作成することも可能です。
「評定(A,B,C)を軸に、全体の人数と各教科の平均点を表示するピボットテーブルを作成してください。」と依頼しましたが、現状では英語での入力を求められたため、Google翻訳の結果を再送信してピボットテーブルを作成することができました。



データ分析・サマリー作成
Gemini をはじめとする AI は、多数のデータの分析を行い、概要や傾向などのサマリーを作成することに非常に適しています。例えば、アンケート結果のような自然言語のデータから回答の傾向などを導き出すなど、人間が行う場合は非常に労力がかかる作業でも、圧倒的に短い時間で、かつ正確に実行することができます。
今回は試験結果のサマリーとして、以下の内容で分析を依頼しました。
この試験結果を分析して、以下の点についてサマリーを作成してください。
・教科ごとの点数の傾向
・教科間の成績の相関の有無
・学生からの感想の傾向
・このクラスのこれからの指導方針へのアイディア
Gemini からは、サマリーの作成の過程を含めた応答がリアルタイムで返されてきましたが、分析結果が長すぎたのか、最後のサマリーの途中で応答が完了してしまいました。
そのため、「最後のサマリー出力の部分が途切れたため、再度表示してください。」と送信して、最後のサマリーを受信しました。サマリーの作成は、観点やポイントごとに依頼を繰り返す方が、より効率的で使いやすいケースもありそうです。
以下は、実際にGeminiから受信したサマリーです。(分析の過程の応答は長いため割愛しています)
良くまとまっていると感じましたが、利用の際は必ず内容を確認して、誤認や不適切な表現などがないかチェックすることが重要です。
1.教科ごとの点数の傾向

2.教科間の成績の相関の有無

3.学生からの感想の傾向

4.このクラスのこれからの指導方針へのアイディア

その他の機能
書式の編集
前述したピボットテーブルの作成や、条件に応じて書式を設定するなどのスプレッドシートの編集については、現時点(2025年6月)では英語での入力が求められました。このため、英語でプロンプトを入力する必要がありますが、Google翻訳などを利用すれば、日本語での条件指定だけで利用することも可能です。

書式の変更についても、Google翻訳の結果をそのまま貼り付けて実行し、希望通りの背景色を設定することができました。

また、書式以外でも複雑な処理を依頼する場合など、日本語では処理が受け付けられないケースがありえると考えられますが、このような場合でも Google 翻訳との併用は有効な手段になると思います。
テストデータの生成
システム開発やGAS(Google Apps Script)の作成時など、テスト用のデータが必要な場合は、Gemini に条件を伝えることでランダムなデータを生成することも可能です。
前述のとおり、当記事で利用したデータも Google スプレッドシート上で Gemini に作成を依頼しました。作成時のプロンプトは以下の通りです。
このシートに、「あるクラスの試験結果」のテストデータを作成してください。
・データ数は30~35件程度
・データの項目はNo.(1からの連番)、各教科(国語、数学、英語)の点数、試験結果への感想
・各教科の点数の分布は平均点が75点程度、標準偏差が20程度(それぞれ±3程度の範囲であれば可)、点数の上限は100点とする
・テスト結果への感想は重複しないように、成績に応じて難易度や学習への意欲などを織り交ぜた多様な内容で、20~30文字程度とする
・テスト結果への感想は学生(高校1年生)の視点で作成する
ただし、このプロンプトを送信時は「データを作成しますので、少々お待ちください。」と表示された後に応答がありませんでした。このため、1~2分後に「上記で作成したデータについて、33件分を表示してください。」と指示をしたところ、スムーズに応答が返ってきました。
これは処理のタイムアウトの可能性もあるため、「条件は可能な限り具体的な指示を行い、曖昧な条件はなるべく指定しない」「あまり大きなデータはいっぺんに生成させない(何度かに分けて生成する)」といったポイントに注意すると良いかもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。Google スプレッドシートにおける Gemini の活用は、単にデータの解析やサマリー作成、グラフ作成を効率化するだけでなく、平易な言葉で指示を出すだけで、作業時間の劇的な短縮はもちろん、データから新たな気づきや洞察を得ることもあると思います。
自然言語でプロンプトを送信できる Gemini は、今回紹介した以外にも、まさに利用者の数だけ存在する多様な使い道があると言えます。Google Workspace を利用する際は、ぜひ Gemini の強力なアシスタンスを体験してみてください。