テクノロジー / 帳票

システム開発と帳票 | 帳票とは?初めてのシステム開発とアウトプット

2025.04.18

Webシステムの開発では、ユーザー向けの画面(UI)以外の機能にも、バッチ処理やバックエンド機能など、様々な機能が存在します。特に業務系のシステムでは、帳票と呼ばれるドキュメントの作成、出力は切り離せない重要な機能ですが、初めてのシステム開発の現場で「帳票」と聞いた際に、どのようなものが対象となるのかピンと来ない方もいるのではないでしょうか。

当記事では、帳票の種類やシステム開発における帳票の役割などについて、簡単にご説明します。

システム開発と帳票

帳票とは

一般的に帳票とはどのようなものなのでしょうか。辞書で「帳票」を調べると以下のように記述されています。

帳簿と伝票。仕訳帳・売上帳などの帳簿類と、支払伝票・収納伝票などの伝票類の総称。
 - 参考: goo辞書小学館 デジタル大辞泉)

しかし、会計の観点からは「帳簿や伝票類の総称」とされている一方、実際には企業や個人の事業経営に関わる書類全般を指すことが多く、システムから出力される帳票も帳簿と伝票だけではなく、請求書や契約書、報告書、分析データなど、行われる業務によって多岐に渡ります。

帳票の種類

帳票の種類は主に「帳簿」「伝票」「証憑」に分類されることが多いですが、これら以外の帳票や複数の役割を持つ帳票も存在します。

記録のための帳票『帳簿』

企業や事業者の活動において、日々の経済活動を記録する上で基本となるのが帳簿です。具体的には、お金や物の流れといった経済活動を、企業が遵守すべき法律や共通のルール(会計原則)に従って、継続的かつ体系的に記録します。

具体的な帳簿の例としては、仕訳帳や総勘定元帳をはじめ、現金出納帳や固定資産台帳などの補助簿が挙げられます。会計システムは、この重要な帳簿の記録と管理を効率的に行い、さらにこれらの帳簿に基づいて損益計算書や貸借対照表などの財務諸表の作成を行うためのシステムと言えるでしょう。

帳簿のイメージ

伝達のための帳票『伝票』

伝票は、企業内外の様々な関係者に対し、取引や業務の具体的な内容を正確に伝えるための帳票です。例としては商品の注文書や現金の出金伝票などがあり、これらの情報に基づいて行動が起こされたり、伝票に記載された情報が帳簿に記録されます。そのため、伝票は正確性が非常に大切になります。

一般的な売上伝票や仕入伝票といったものから、流通システムでは配送伝票や出荷指示書、作業管理システムからは作業指示書といったように、伝票は様々なシステムから目的に合わせて発行されます。

伝票のイメージ

証明のための帳票『証憑』

証憑は、特定の取引や事実が存在したことを証明するために作成、使用される帳票です。 その証明の目的に加え、内容によっては法的効力が発生したり、会計処理の根拠となったりするなど、非常に重要な役割を担います。

証憑に該当する帳票は多岐に渡ります。 例えば、身近なものでは勤務実績を証明する勤務表や、取引の内容を証明するものとして売買契約書、賃貸契約書、業務委託契約書、請求書、領収証などがあります。 さらに、取引の完了を証明する検収書や、公的な事実を証明する住民票などの公的な証明書なども挙げられます。

これらの証憑は、取引の証拠として伝票の作成根拠となり、最終的には帳簿への記録を裏付ける重要な証明となります。

証憑のイメージ(領収証)

その他の帳票

実際には、帳簿、伝票、証憑の他にも、作業日報や各種報告書、事業計画書や生産計画書などの計画書や、顧客管理台帳や端末資産台帳といった各種台帳など、様々な帳票が存在します。

これらの帳票は現状の把握や分析、計画、管理といった目的で利用され、組織運営や意思決定をサポートするために作成されます。業種や組織形態、運営方針などによって作成される内容や様式は様々ですが、重要な帳票の一つです。

計画書イメージ

システムと帳票

システム開発においては、会計処理や社内および取引先との情報の伝達のため、旧来紙への印刷を前提としていたドキュメントを、全般的に帳票と呼ぶケースが多いですが、これらの他にも、売上データや顧客リストなどの集計データ、請求書や報告書の様式の出力といった、システムから行うファイル出力全般がしばしば「帳票機能」「帳票出力機能」などと呼ばれます。(※システムにより「データ出力機能」など、帳票機能と分けている場合もあります)

このため、システムの帳票機能により出力されるドキュメントは多岐に渡ります。

システムにおける帳票の例

前述の通り、システムから出力される帳票は、システムで行う業務により様々です。ここでは、各種システムにおける代表的な帳票を例示しています。

会計システム

・仕訳帳

・総勘定元帳

・各種補助簿

・現金出納帳

・残高試算表

・固定資産台帳

など

販売管理システム

・見積書

・請求書

・納品書

・領収証

・売上伝票

・入金伝票

など

勤怠管理システム

・出勤簿

・就業報告書

・勤務一覧表

・残業集計表

・休暇申請一覧

・有休消化一覧

など

帳票の出力形式と利用

PDFファイル

PDFファイルは、システムが出力する帳票の種類として最も一般的なファイル形式の1つです。PDF形式で出力することで、以下のようなメリットがあります。

・多様な閲覧環境
PDFファイルはパソコン、スマートフォン、タブレットなどのデバイスで閲覧が可能です。Chrome や Safari、Edge といった多くのWebブラウザでも表示可能なほか、無料の閲覧ソフトを利用することも可能です。

・レイアウトの保持
PDFファイルは作成したドキュメントのフォント、画像、レイアウトなどをそのままの状態で保持できるため、閲覧環境に依存せず意図したレイアウトで表示、印刷できます。また、Excel 形式のようにバージョンに依存して表示がずれることもありません。

・改ざん防止、電子署名
PDFファイルには、パスワードによる保護や印刷、編集の制限などのセキュリティ機能により、重要な帳票の改ざんや不正な利用を防ぐことができます。また Excel 形式などのファイルと異なり、誤って内容を編集してしまう心配もありません。

さらに、電子署名と組み合わせて利用することで、文書の真正性や完全性を証明することもできます。これは、法的な効力を持つ重要な書類においては不可欠な機能です。

Excel・表計算形式ファイル

業務システムでは、Excel などの表計算ソフト向けの形式での帳票出力も一般的です。PDF ファイルと異なり編集やデータとしての利用を前提に出力され、以下のようなメリットがあります。

・データの再利用と加工
売上データを様々な角度から集計し直したり、異なる期間のデータを比較するなど、システムから出力されたデータを自由に加工し、目的に合わせた形で再利用できます。また、表などのデータを他のドキュメント(Word、PowerPointなど)にコピーして活用することも容易です。

・柔軟な編集とレイアウト調整
書面への但し書きを追加したり、宛先などが長くそのままでは見切れてしまうような場合でも、直接編集やレイアウト調整を行うことができます。また、Excel形式のファイルであれば、PDFファイルとして保存が必要な場合「Adobe PDFとして保存」する機能も利用可能です。

・他のシステムとの連携
Excel 形式をはじめとする表計算ソフトのファイル形式は、多くの他のビジネスアプリケーションやデータ分析ツールと互換性があります。これにより、出力されたデータを別のシステムやソフトに取り込んでさらに分析したり、共有したりすることが容易になります。

その他のファイル

他にも、システムから出力されるファイルには以下のようなものがあります。

CSVファイル

CSVファイルはカンマ区切りのシンプルなデータ形式のファイルです。基本的に他のシステムやソフト等にデータを連携するために利用され、書式などを持たないため印刷には不向きなファイルですが、システム開発時はCSVファイルも帳票機能で出力するファイルの1つとして扱われることがあります。

CSVファイル のメリットは、以下のような点が挙げられます。

・汎用性
CSVファイルはシンプルなテキスト形式であり、多くのプログラミング言語でも取り扱いが容易なため、多くのアプリケーションで読み込み・書き出しが可能です。このため、表計算ソフトやデータ分析ツールなど様々な環境とデータを共有・連携するのに適しています。

・軽量性
書式情報や数式などの余計な情報を含まないため、同じデータ量でも Excel などの専用形式に比べてファイルサイズが小さくなる傾向があります。これにより、ファイル転送や保存に必要な容量を抑えることができます。

CSVファイルはこれらの汎用性と軽量性から、社内や取引先とのデータ交換などによく用いられます。ただし、複雑なデータ構造や書式を保持できない点には注意が必要です。

Word・ドキュメント形式ファイル

契約書のドラフトや議事録など、細かな編集や修正を重ねることを前提とするファイルについては、Wordなどのドキュメント形式でシステムから出力されることもあります。

特に企業間の契約書などは、締結前に相互に確認し、内容の調整を行う必要があるため、ドキュメント形式のファイルで作成し、最終的な内容をPDFファイルとして交付、保存するようなケースも考えられます。

直接印字・印刷

帳票の内容をファイルに保存せず、直接プリンターなどの機器で印字する場合もあります。電子化が進む現代では利用頻度は低下傾向にありますが、即時に発行できる、特別な閲覧環境が不要といったメリットがあります。

例としては、荷物に貼付する発送伝票や荷札、整理券などが挙げられます。システム開発においては、プリンターとの連携や印字フォーマットの管理などが考慮すべき点となります。



今回はシステムと帳票について説明しましたが、いかがでしたでしょうか。電子化が進み紙媒体への印刷の頻度は下がっていますが、電子データのやり取りが進んだことで、むしろシステムからは様々な帳票を出力するようになっているとも言えます。

帳票機能の開発では、出力するファイルの役割やその利用シーンを考慮して、適した形式での出力が必要となります。別の機会にはなりますが、当サイトでもプログラム言語でのこれらのファイルの読み込みや出力を行う方法などもご紹介していきたいと思います。

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